Saturday 18 January 2014

ふたりで、子連れフライト

クリスマスの日、マーティーと私は愛彩を連れてオーストラリア行きの飛行機に乗りました。動き回る一歳児を連れてのフライトにはいろいろと不安があり、様々なトラブルを想定していましたが、事件は飛行機に乗る前に起こりました。

空港へ行く途中のタクシーの中でマーティーが言いました。
「なんかぜったい忘れてる気がする」
私「私もそんな気がする...」
二人で旅行していたときと違って、赤ちゃんを連れての旅行はいろんなベビーグッズが必要になります。着替えにおやつにおもちゃ...。私は前日の夜、いろんなトラブルを想定してベビーグッズに足りないものがないか何度も確認しました。何度確認しても、なーんか忘れている気がする...。
マーティー「ま、サイフと携帯とパスポートさえあれば、後はなんでも買えるからね」
私「そうだね。サイフと携帯とパスポート...、うん、持った持った。大丈夫だよね」

そしてチェックインのとき
「ミス・アイサ・ブラウンのパスポートを見せてください」と言われて、私たちはお互いの顔を見合わせました。愛彩のパスポートを持ってくるの忘れてた〜!!
目の前が真っ暗になる私。「吐きそう」とうなるマーティー。後方にいた気のいいお兄ちゃんが、「大丈夫、今から取りに帰って戻ってくれば間に合うよ!」と根拠もなく元気づけてくれました。しかし、チェックインが閉まるまでに1時間半。空港から家までは片道1時間かかります。「物理的に間に合わない...」と私はすぐに諦め、次の日のフライトに空きがないか、ビジネスクラスにアップグレードできないかなどいろんなオプションを考え始めました。
「とりあえず、いったん座って選択肢を考えよう」とマーティーに言うと、マーティーは
「いや、そんな暇はない。今、解決するんだ!ぜったいこの飛行機に乗る!」とタクシー乗り場まで走っていってしまいました。

私はベビーカーに愛彩を乗せ、チェックインできなかったスーツケース二つをなんとか片手で押して待合所まで行きました。チェックイン担当の方が気の毒そうな顔で私を見送ってくれました。「マーティーがタクシーでどんなに急いで家に帰ってパスポート持ってきても、ぜったい間に合わない。誰か近所でスペア・キーを持っている人はいないか...」と考えた末、一人だけ思い当たる人がいました。私たちはホリデー中、ロンドンのフラットをAir BnBを使って貸すことにしていました。近所に住んでいる若い女性が、お母さんが訪ねてくるのに私たちのフラットを使いたいということで、その女性にスペアキーを預けていました。

私はすぐにマーティーに電話しました。マーティーはすでにタクシーで家まで向かっていました。
「Air BnBのゲストの娘さんがスペアキーを持ってるから、彼女に頼んでパスポートを持ってきてもらおう」
マーティーはタクシーの中からすぐにその方に電話し、別のタクシーをその方の家まで手配しました。運良くその方は自宅にいて、快く協力してくれました。その方は家まで来たタクシーに乗って私たちのフラットまで行き、マーティーの指示に従って愛彩のパスポートを見つけてタクシーに乗せてくれました。マーティーはパスポートを乗せたタクシーの運転手さんと連絡を取りながら中間地点で落ち合い、パスポートをもらって空港まで引き返しました。

マーティーがそうやってミッション・インポッシブルを決行している間、私は愛彩とスーツケース二つとベビーカーを抱えて空港でオロオロと待機しておりました。シンガポール航空のチェックイン担当のマネージャーらしき方(美女)がやってきて、「マダム、事情は全て伺いました。旦那さまは今どこにいらっしゃいますか?」と聞いてきました。「パスポートを持ってタクシーでこちらへ向かっています。チェックインが閉まる時間までに間に合うかどうか...」と私は答えました。すると「チェックインが閉まる時間を過ぎても少しならお待ちしますから、とりあえず荷物とあなただけチェックインしましょう」と言ってくださったのです。

私は全く冷静なつもりだったのですが、身長の低い童顔の女が(ロンドンでは特に小さく見られる)ひとりで赤ちゃんを抱っこしながら大荷物を抱えてウロウロしている様は、同情をかう風情をドバーッと漂わせていたのか、「大丈夫。とにかくそこに座って待っていてください」といたわってくれました。どう考えても超迷惑な客の私たちにそこまでよくしてくださるなんて感激〜!

荷物と私だけチェックインをしている間、「荷物もチェックインしちゃって、マーティーが間に合わなかったらどうしよう...」という不安にかられつつ携帯を握りしめていました。10時55分のフライトでチェックインが閉まるのが10時10分。なんと10時半になったのにマーティーは現れません。さっきの美女のマネージャーさんが「旦那様は今どこですか?フライトを遅らせるわけにはいかないので、待つかキャンセルするか今決めないといけません。直接旦那様と電話で話をさせてください」と言ってきました。携帯でマーティーに電話したところ「カーナビにはあと8分で着くとあります」という答え。美女のマネージャーさんは「うーん。ギリギリだけど、待ちましょう」と言ってくれました。

「ここから飛行機までは歩いて15分かかります。本当にギリギリなので、先に奥様と赤ちゃんはセキュリティーを通ってゲートのところで待っていてください」と、同僚の人をエスコートにつけてくれました。エスコートの人がセキュリティーの長蛇の列をひょいひょいと割り込ませてくれて、あっという間にゲートにたどり着きました。ゲートでマーティーを待つこと数分、マネージャーさんとマーティーが手に手を取る感じで走って来ました。三人分のパスポートをゲートで見せて、ギリギリセーフ!無事に飛行機に乗ることができました。SorryとThank youを連呼する私たちを、マネージャーさんとエスコートの人は笑顔で「メリークリスマス」と見送ってくれました。かっこよすぎる。ハリウッドみたいな展開に感動〜!!飛行機も遅れずにすみました。マネージャーさんの優しさと判断力に心より敬服いたしまっする。ほんとーにご迷惑をおかけしました。まじでありがとうございました。シンガポール航空、最高!

後日、マーティーから「本当はカーナビに11分て書いてあったけど、3分サバ読んだ」と教えてもらいました。「アンタすげー神経だね!」と心の中で激しくツッコミましたがもし11分と答えてたら乗れてなかったかも。シンガポール航空様、乗客の皆様、迷惑きわまりない客で本当にすみませんでした。不謹慎ですが、人の優しさが心にしみた一件でした。Air B&Bのゲストの娘さん、タクシーの運転手さん、根拠なく励ましてくれた気のいい兄ちゃん、そしてシンガポール航空の社員の皆様方、特に美女のマネージャーさん、本当に本当にありがとうございましたー。

No comments:

Post a Comment